JR 東日本、社内外のデータをクラウドに集約。他社とも連携し、 IoT や AI を利用した新たなサービス開発を模索

JR 東日本、 IoT や AI などの進展を見据えたシステム基盤の構築とコンソーシアムの立ち上げを発表

先般 11 月 8 日、東日本旅客鉄道 ( JR 東日本) は、社内外の鉄道運行や気象データ等を集約したシステム基盤をつくると発表しました。さらに、車両メーカーや大学と産学連携のうえ先端技術やデータの活用方法を研究するコンソーシアムも立ち上げるとのこと。 IoT や AI が産業に本格導入される時代に即した、新たなサービス開発の模索を開始しました。

「技術革新中長期ビジョン」 の策定
~ IoT 、ビッグデータ、 AI 等により 「モビリティ革命」 の実現をめざします~
( 2016 年 11 月 8 日)
http://www.jreast.co.jp/press/2016/20161105.pdf

 

クラウドシステムやコンソーシアムの実現で他社とも連携した「イノベーション・エコシステム」の構築を目指す

本取り組みにおける新たなシステム基盤はクラウド上に構築します。従来、それぞれ別に管理していた設備や車両、運行などのデ一タを一カ所に集約することになります。画期的なのは、競合である他鉄道会社やバス会社が公開しているデータも扱うこと。この新システムを活用することで、車両部品データをセンサーで集め、故障や不備が起きる前に発見が可能となるということです。計画では数年内に試作システムを完成させる予定となっています。同時に、他社のデータとも連携して乗客の利便性を高めるスマートフォン用アプリの開発などを見込んでいるということです。

冒頭に紹介した車両メーカーや大学などと立ち上げる 「モビリティ変革コンソーシアム (仮称) 」 については、具体的な設立時期は未定ですが、他の交通事業者、国内外メーカー、大学などの研究機関との連携を予定しており、同業他社やバス会社にも参加を呼びかけていく予定です。このコンソーシアムでは、データを活用してモビリティを変革していくためのアイディア提案や、プログラム開発を行うイベントの実施、実証実験施設の外部への提供などを行っていきます。社内外のアイディアを積極的に取り込み、複数の事業者が一体となって、モビリティの新たな価値創造を目指すということです。コンソーシアムへの参加だけでなく、アイディアも外部から募り、実証実験用の自社施設を外部に提供するなど、JR東日本による「鉄道事業者全体」の叡智を結集させた利益供与の仕組みが注目となっています。

 

日本が抱える生産年齢人口減少という社会課題にデジタル化で対応、新たな収益モデルの確立を目指す

JR 東日本が積極的にこうした取り組みに着手する背景には、見逃せない課題として生産年齢人口の減少という日本が抱える課題が影響しています。同社を含む鉄道事業全体では、平成 23 年頃までは不景気の影響が色濃く、中長距離のビジネス移動やレジャー意欲が減退。それに伴い、輸送人員の緩やかな減少傾向にありました。平成 24 年頃からは景気の回復を受け、有効求人倍率も増え、輸送客全体が少しずつ増加、昨今では海外からの外国人旅行者の増加も助け、各社全体的に緩やかながら回復傾向にあります。
しかしながら、生産年齢人口の減少は 2018 年頃から深刻になるとされており、鉄道各社においては輸送に限定しない新たな収益モデルの確立が急がれているのです。

昨今では、 JR 東日本以外にも多くの企業が、 IoT を取り入れて異業種に進出しています。東京電力エナジーパートナーはソニーモバイルコミュニケーションズと業務提携し、スマートホーム分野で IoT 技術を活用した住宅サービスの開発を始めています。東京電力が設置を進めるスマートメーターと、ソニーモバイルが提供するスマートフォンなどの小型機器を利用し、家電の遠隔操作によるエネルギー制御や子どもの見守りサービスなどを来年にもスタートする予定です。このように、研究開発資金が豊富な大手企業による IoT や AI といった先端テクノロジーを活用した新規事業の創出が相次いでいるのです。

もう一つ、このニュースで注目なのが、同業他社や教育機関をも巻き込み新システム基盤を開発するという点です。 JR 東日本と言えば元国鉄であり、企業風土はやや保守的傾向にあります。それが、デジタル駆使、かつコンソーシアム設立のうえ新たな取り組みに着手することは、国内鉄道事業における大きな変革が期待されます。

 

デジタルを主体にしたモビリティ革命で、真にユーザーが求めるサービスを提供可能に

今回の発表で打ち出したイノベーション・エコシステムは、自社、もしくはグループ会社のみの中で閉じたものではなく、デジタルを利用して相互に連携し、サービスの革新を図っていくというものです。鉄道という、自然状況や他の交通事業者の事情などにも大きな影響を受ける事業こそ、ビッグデータや AI による遅延予測、故障予測などと相性が良いと言えます。過去のデータを利用した正確な予測が実現されれば、多くの乗客の利便性を向上させることができるでしょう。デジタルを活用してビジネスを進化させていくことで、従来の交通機関が、移動・輸送を主体とした新たなモビリティサービス事業へと変化していきます。 JR 東日本グループの目指すモビリティ革命も、デジタルトランスフォーメーションの一種であり、移動というキーワードの周辺で新たに創出される多くの価値や新しいサービスを提供していくための新たな戦略と言えるでしょう。

 

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