金融業界独自の課題に AI がどう応えるのか?日生、 SMBC の事例に学ぶ

日本生命、 AI を使って顧客に保険提案、実用化に向けた実証実験開始

日本生命保険相互会社が AI を利用して顧客へ保険商品の提案を行う実証実験を 12 月末から始めることを 12 月 13 日に日本経済新聞が報じました。報道によるとこの施策は営業力の向上を目指すもので、過去の 4 千万件分の契約情報を AI で分析のうえ、顧客の状況に応じて最適な保険商品を提案し販売につなげるとしています。

日生、 AI で保険提案 17 年 4 月にも本格稼働
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO10573810S6A211C1NN7000/

病歴や健康リスク、支払い金額など、顧客ごとに条件や求める保障が異なるため、どの保険商品が自分には合っているのか正しく判断することは難しいケースがあります。そのため、営業担当者との関係次第でなんとなく購入してしまうということもよく耳にするものです。顧客を多く持つ商品理解の卓抜したベテランの営業担当者であれば個々に合わせた適格な提案も可能ですが、そうした一定水準に達したスキルを全員に共有することは難しいことでした。しかし、個々の端末に必要な情報項目を入力させることで、保険商品の選択に必要な情報が網羅されるため営業担当者の人的レベルを問わずに、最適な提案ができるようになります。たとえば、特約を加えた際や保障金額を減らした際の月々の支払額の計算なども簡単に実行でき、人為ミスによる誤案内も減らすことができます。学習機能を備えた人工知能によって、紋切り型でないワン・トゥー・ワンの提案がフィットしていくことで契約者の人生設計に沿う商品となります。

 

日生、保険引き受けや支払い査定、コールセンターにも AI の導入を検討中。業界初の試み

今回の報道以前、 10 月にも日生の AI 活用はニュースになっていました。

日本生命 引受・支払い査定を保険業界初の自動化検討 AI 活用で
http://www.sankei.com/economy/news/161007/ecn1610070003-n1.html

健康状態などのパーソナルな条件が影響する保険の契約においては、顧客が虚偽の記載をしていないかなど、担当者は真偽を見極めて対応する必要があります。日生では、 AI を活用して顧客の人間ドッグデータのなかから特定の 20 〜 30 項目を抽出すると共に、診療報酬明細書などもビッグデータとして蓄積し処理を行います。その結果は担当者が判断するためのサポート材料として利用されますが、いずれは引き受け判定や支払い査定を全部 AI で行えるよう、研究を進めています。

日生はコールセンターでの応答にも AI を活用するなど、多領域で AI の実験や導入を進めています。保険の提案から引き受け、査定、コールセンターにいたるまで AI で自動対応するための研究を行っているのです。保険を契約し補償金をもらうまで、担当者の肉声を一度も聞くことなく、すべて AI との対話で済むようになる日も近いのかもしれません。

 

多領域で AI の実用化に取り組む三井住友銀行、サイバー防衛の研究にも着手

同じ紙面には は三井住友銀行が人工知能を活用してサイバー攻撃への防御を強化していくことも報じられていました。

三井住友銀、サイバー防衛に AI 活用 迅速・正確に対応
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO10573560S6A211C1NN7000/

オンラインバンキングを導入して以来、ウイルスメールなどをはじめとするサイバー攻撃に金融機関は悩まされています。ウイルスメールが送信されたアドレスなどの情報は 25 万件蓄積されており、日々その情報はアップデートされています。常に更新されるこの情報を利用した受信拒否などの対応には限界がありました。ここに AI を導入して最新情報を分析することで、ウイルスメールなどのサイバー攻撃への素早い対応が可能となるのです。

このシステムに使われているのは、 IBM のワトソンコンピューター。データからロジカルに推論を導き出し、さらにその結果を利用して学習を重ねていくワトソンは、監視システムが検知したサイバー攻撃が本当に脅威なのか誤検知だったのか、脅威のレベルや対応方法をも含めて瞬時に導き出すことができます。

三井住友銀行は AI の実用化に向けてさまざまな POC (Proof Of Concept) に取り組んでいくことを 9 月に発表しており、このサイバー防衛への取り組みも、その一環と言えるでしょう。

AI の実用化に向けた取組について (1/1)
http://www.smbc.co.jp/news/html/j930029/j930029_01.html

このように、日本生命や三井住友銀行という保険業界、金融業界を代表する大手企業が積極的に AI の活用に取り組んでいます。彼らが旗振り役として導入を進めていくことで、その業界への AI 導入が加速的に早まるはずです。

 
 

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