大田区、羽田遊休地でものづくり拠点を整備。IoT の導入で中小工場をネットワーク化、新産業創造の発信拠点に

大田区、羽田空港地区の遊休地に 「ものづくり拠点」 を整備

5 月 18 日、東京都大田区が羽田空港地区の遊休地に 「ものづくり拠点」 を整備し、区内の中小企業をネットワーク化したシステムセンターを置くという構想を、日経新聞が報じました。

ものづくり 羽田で離陸 大田区、空港地区遊休地に拠点 ( 2016 年 5 月 18 日)
http://www.nikkei.com/paper/article/?ng=DGKKZO02436580X10C16A5L83000

 東京都大田区は2020年、羽田空港地区の遊休地に 「ものづくり拠点」 を整備する。区内の中小約 500 社をネットワーク化、部品などの受注から納品まで一貫管理する本部機能を持ったシステムセンターを置く。併せて全国の中小向けに、 3D プリンターなどの設備をもつ試作品の製造施設も開設する。交通の利便性の高い羽田地区で新しい技術や製品を生み出す中小の拠点にする。

 

区主導で IoT の技術を導入。 「下町 IoT ファクトリー」 と 「大田区プロトタイプセンター」 で新産業の創出を狙う

今回報道された 「ものづくり拠点」 構想は、区の主導で IoT の技術を利用して大田区内の町工場のネットワークを集積し、区内にある生産設備がネットワークでつながれた 「下町 IoT ファクトリー」 を構築するというものです。また 3D プリンターやレーザーカッターなどの最新機器を導入し、新製品のプロトタイプの試作などができる 「大田区プロトタイプセンター」 の整備も構想されています。

この 「下町 IoT ファクトリー」 と 「大田区プロトタイプセンター」 などの施設は国家戦略特区の認定を受けた羽田空港地区の約 16.5 ヘクタールの遊休地への建設を予定しています。この特区には、 2020 年までに新産業の創出や観光振興のための産業施設を整える計画ということです。

 

「仲間まわし」 のシステムで共存共栄してきた 「モノづくりのまち」 大田区の町工場

「モノづくりのまち」 として知られている大田区内には約 4,000 もの工場があります。その多くは中小企業で、 「削る」 「磨く」 「形成する」 「メッキする」 といった専門工程のみを行っている工場が多いという特徴があります。各工場はそれぞれが高度な技術力を有し、各工場が連携していく 「仲間まわし」 という独自のシステムを形成しています。 「仲間まわし」 とは、ある製品の試作などが発注された場合、 A 工場から B 工場、 C 工場から D 工場、といったように、仲間の工場に次の工程を依頼し、その製品を仕上げて納品できるネットワークを意味します。

 

システムセンターがハブとなり、仲間まわしがバージョンアップ!一つの仮想工場として、全体最適化された工程管理が可能に

新しく構築される 「下町 IoT ファクトリー」 には、システムセンターが置かれ、各中小企業をつなぐネットワークのハブの機能を持ちます。そこでシステムの保守や各社との連携や調整を行い、所属するすべての工場をひとつの仮想工場のような形で管理し、製品の納品まで一貫した工程管理を行うことを構想しています。

多くの製品に IoT の導入が見込まれている現在ですが、中小企業の多い大田区の工場では、資金面などから IT システムや IoT 機器の導入などが進んでいませんでした。しかし、区が主導してシステムを導入することで、各工場の負担は少なくなります。そして、各工場の稼働状況や、加工する部品や材料の入出庫などがシステムセンターで管理できるようになり、さらにセンターを通して新たな取引先からの発注も受けることができるのです。

また、大田区の中小工場へは、試作品などの多品種少量生産の依頼が多いという事情があります。原料調達から最終加工までシステムセンターが工程管理を行うことで、原料の調達などのムダもなくなり、空いている工場に発注を回すなど、全体最適化された効率のよい生産が可能となります。結果として、間接業務なども削減され、納期の短縮などにもつながります。

 

2020 年、大田区の中小工場がひとつの巨大な仮想工場に生まれ変わる。これぞものづくりのデジタルトランスフォーメーション!

この 「下町 IoT ファクトリー」 の試みでは、まず 2016 年度内に約 50 社が参加するグループが作られる予定となっています。この 50 社の部品や材料などの入出庫をセンターで管理できるようにすることから始め、施設が完成する 2020 年には約 500 社の工場がシステムでつながれる予定です。最終的には、各機械でどんな加工が行われているかまで、システムセンターで管理できるようにすることを目指しています。

大田区は、この 「下町 IoT ファクトリー」 と 「大田区プロトタイプセンター」 で日本の玄関口である羽田で、新産業創造の発信拠点を目指していると言えるでしょう。

最新機器を導入した 「大田区プロトタイプセンター」 でプロトタイプを作り、中小企業などが集まる 「下町 IoT ファクトリー」 で製品を作っていく。そしてその技術力やネットワークをもとに先端産業分野を企業誘致し、起業やベンチャー企業の支援を行っていく…。

「国内外から企業・人材・情報が集まりやすい羽田という地で、その技術力で人や企業を集め、競争力を強化していく」 という大田区だからこそできるこの取り組み。東京オリンピック・パラリンピックが行われる 2020年には、大田区の各工場には IoTが導入され、一つの仮想工場として効率的な生産体制が整っていく予定です。地域の小さな町工場が、それぞれ IoT の技術というデジタルでつながり、大きな生産設備を形作っていくというこの 「下町 IoT ファクトリー」 構想、町工場の “ものづくり” における、デジタルトランスフォーメーションの一例と言うことができるかもしれません。