リーダーズ・プロファイル:Case03 デジタルマーケッター 緒方恵氏①

緒方 恵

2016.09.21


リーダーズ・プロファイル:Case03 デジタルマーケッター 緒方恵氏①

 

非常に早期の段階で東急ハンズのオムニチャネル施策を推進し、業界でも実に著名なデジタルマーケッターとして知られる緒方 恵 氏。 2010 年に東急ハンズの通販事業部に異動し、東急ハンズのオムニチャネル施策を一から手がけてきた緒方氏が、 2016 年 5 月に同社を退職されました。そのフランクな人柄から、東急ハンズの名物デジタルマーケッターとして業界内で交流を広げ、幅広く勉強会や交流会を行ってこられた緒方氏に転職活動中というこのタイミングでインタビューを敢行。ご自身の経験やデジタルマーケティングの業務にかける想いなどについてお聞きしました。

 

 

インテリアが好きで東急ハンズに就職。バイヤー、 VMD から、右も左もわからないネットストア担当に

 

2005 年に新卒で東急ハンズに入社し、そこで家電・照明のバイヤーを 2 年間経験した後、2007年、東急ハンズのリブランディングに伴う渋谷店リニューアルのプロジェクトでスマートフォンアクセサリー の立ち上げを担当し、同時にヴィジュアルマーチャンダイジング ( VMD )も担当しました。

そんな折、スマートフォンアクセサリーを扱っていたり、自分でも好きで iPhone などをいじっていたことから、 「彼はデジタルに詳しいらしい」 と思われたのかどうかはわかりませんが (笑) 、 2010 年に通販事業部に異動となり、ネットストアの運営を担当することとなりました。ここでは企画・ページ作成・物流在庫管理・カスタマーサポート、すべてを横断して手掛けていました。この、 Web チームへの異動が自分の人生の転換期だったかと思います。

 

 

バリューを出せない危機感をモチベーションに猛勉強した結果、新たな業務ラインにシフト。最初から得意で才能があったわけではなかった仕事に開眼

 

異動はしてみたものの、その頃の私は Web についての知識がほとんどなかったこともあり、まったく戦力にならなかった。バイヤーの頃はそれなりにバリューを出せていたと思うのですが、通販事業部に異動して最初の頃は、まったく思うように動けないという。バリューを出せないままで働くという忸怩たる思いのなか、モチベーションが保てない強い危機感を抱き、それからネットストアや Web のことなど、無我夢中でさまざまな勉強や研究に没頭したのを覚えています。

 

調べまくり、勉強しまくっていたある時、 「東急ハンズのネットストアやデジタル施策にたりないものは何か?」 が見えてくるようになりました。そこで 「ここをこう改善したい」 、 「この機能を追加したい」 などとさまざまな提案を部長に行っていたところ、それまでのネットストアのいち運営担当から、徐々にデジタル施策の新規開発担当へ業務がシフトしていきました。この業務は、多方面から新しいことを探してきて導入を進めていくというもの。そこで SNS アカウントの開設・運用を行ったり、 DSP を活用した新しい Web 広告の開発やフェイスブックを利用したリコメンドサービスの開発などを実施していったのです。

 

 

 

リアルを動かすネットのパワーに突き動かされ、リアルとネットのシームレス化を推進。最終的に実装となっていたオムニチャネル

 

そうした日々を経て、自分のなかで一つの分岐点となったのが、ツイッターとの出合いでした。ツイッターを起点として、インターネットを介して情報が拡散し、実際に人が動き少しずつ大きな渦となっていく事態を SNS 担当者として日々目の当たりにし続けたことにより、「インターネットがリアルに人を動かす」 という力を実感するようになりました。そこで “リアルとネットのシームレス化” に注目するようになったのです。

 

それまでよく知られていたように、東急ハンズはリアル店舗の品揃えが強みの会社でしたが、 “ネットショッピング” 全体を競合と考えると、楽天さんやアマゾンさんなど、さまざまな事業者が多数の商品を販売しているため、品揃えでは負けてしまうのです。東急ハンズのリアル店舗の売り上げが、楽天さんやアマゾンさんに侵食されている感がありました。しかし、スマートフォンが普及してきて以降、オムニチャネル的な施策を実施できたり、 SNS でお客様とのコミュニケーションを地道に行うなど、インターネットの力を使って、東急ハンズの店舗に人を呼ぶ、東急ハンズをより面白くする施策が打てるようになってきたんです。

 

こうした実体験を経て、自分のなかでミッションが明確化したのもよかったことでした。ネットの力を使って衰退を防止し、全国にリアル店舗を持つという強みを活かして反撃する。もっと平たく言えば、 「ネットを使って店舗をもっと面白くしたい」 ということでした。リアル店舗からネットストアへ、ネットストアからリアル店舗へ、というふうにシームレスにつなぐサービスを開発しました。例として、ネットストアで全店舗の在庫を表示するとかは好例だと思います。他にも、ネットストアで購入したものをリアル店舗で受け取れるようにする、リアル店舗で実物をチェックしてからネットで購入できるスマホアプリを開発したりなど。基本はお客様目線で、 「こんなサービスがあったらすごく便利」 という発想でオンラインとオフラインの循環型サービスを作り上げることに成功。ソーシャルメディアを介してネットがリアルを動かす、便利にする、楽しくするということに確信を持ち、早期からスピード感を持って施策を打つことができました。結果、 O2O やオムニチャネルという言葉が普及する前から、そのようなサービスを開始することができていたのはよかった点の一つでした。

 

やがて私がいた組織自体も 「オムニチャネル推進部」 と名称を変更し、東急ハンズの IT 施策はすべてオムニチャネルの推進のためのものである、という意思表示をしていくようになりました。

 

 

ネットストアとリアル店舗があるからこその強みがある。シームレスにネットとリアルをつなぐことで真のサービスが実現可能に

 

東急ハンズはリアル店舗が強い会社なので、ネットで新たな施策を打つと、店舗にも新たなオペレーションが発生します。新たな機能を実装する際には、店舗とのしっかりした話合いは欠くことができません。私としては 「この機能はお客様にとって絶対的に便利で喜ばれるので、やるべきだ」 と強い確信を持っているわけです。だから、新たな機能を導入するごとに全国の店舗をまわって各店長や管理課の皆さまと顔を突き合わせてお願いし、わかってもらうようにしていました。

 

東急ハンズでは、ネットとリアルの両方でお客様とコミュニケーションができるという強みがある。その強みを生かして、お客様にとってより便利なサービスを追求していくのは当たり前のことだと思っています。

 

※この取材は 7 月 11 日に実施しています。

 

リーダーズ・プロファイル:Case03 デジタルマーケッター 緒方恵氏①

リーダーズ・プロファイル:Case03 デジタルマーケッター 緒方恵氏②

←INTERVIEW 一覧へ戻る