【事業会社による挑戦】 富士フイルム(株) 一色 昭典③

一色昭典

富士フイルム(株)

e 戦略推進室マネージャー

2016.06.06


【事業会社による挑戦】 富士フイルム(株) 一色 昭典③

 

80 年にわたり、時代の変化にきめ細かく対応しながら新しい事業を次々と立ち上げ成長を続ける富士フイルム(株)。

 

異なる多彩な事業部、海外支社を貫く普遍的価値を創造し、また提供するために、同社が重視するのがデジタルマーケティング戦略です。同社でデジタル領域を管掌する e 戦略推進室・マネージャーの一色昭典氏に、今求める人材について、語っていただきました。

 

 

技術は習うことができる。しかし意欲や忠誠心、愛社精神という根本の素養が成長を押し上げる扇の要となる

 

今、我々が抱えている課題の最たるものはと言えば、ヒューマンリソースの不足という点が挙げられます。そもそもマーケティングに携わっている人材自体が少ない上に、さらにデジタルマーケティングを理解できる人材というのが、なかなかいないときている。

 

やる気があって顧客の立場でものを考えられる人というのは、どこの会社でも欲しい人材だと思いますが、実はこの根本的な素養が非常に重要。それと、自社製品を愛していて、新しい取り組みに抵抗がない人というのも欠かせません。変化の激しい時代において、ましてやデジタルシフトによって当たり前だったことがどんどん刷新されていく日常というビジネスの場にあって、自社のサービスや商品を、心底愛している人間にどうしたって他社の人間は敵いませんよ。だって四六時中 「どうしたらもっとよくなるのか?」 と絶えず考え続けているのは自社の人間だけ。であれば、外注してオリエンから始めて、課題をわかってもらうことに時間を要しているのは勿体ないことです。その間に、手を動かせる自社の人間が改善を断行していくことが、真の勝ちパターンでしょう。

 

 

初開催の社内セミナーは満員御礼の大盛況。知識の共有が社内の意識を変えていく

 

先日、新たな取り組みとして、先日 「富士フイルム デジタルマーケティング戦略」 という社内セミナーを開催しました。グループ全社の希望者を対象とし、当社のデジタルマーケティング戦略や事業展開などについての解説から、アナリティクスツールの使い方、デジタルマーケティングを各部署のマーケティングにどう生かせるかを考えてもらうことを目的としました。このセミナーには、実際の KPI やコストといった完全コンフィデンシャルなリポートも満載で、当社のデジタルマーケティングにおける取り組みや成果がふんだんに詰まったものでした。

 

このセミナーの参加者をイントラネットで募集したのですが、募集開始してすぐに満員御礼状態!しかも性別年齢を問わず幅広い方が参加してくれて、社内の意識が変わってきているということを実感できました。参加者からは、 「次はいつやるのか」「今後はこういった内容でセミナーをやって欲しい」などという声が上がっており、意識の高い、デジタルマーケティングの必要性を感じている社員が多く集まってくれました。

 

富士フイルム株式会社 一色 昭典氏とウィンスリー代表 黒瀬雄一郎

  ウィンスリー代表の黒瀬と

このことに手ごたえを感じましたので、今後は参加者のITに対する知識をセグメントした形でセミナーを行っていこうと考えています。当社には地方の工場などにも、統計分析が得意なエンジニアなど、優秀な人材がたくさんいますが、本社にいると各地方の人材のスキルや知識までを把握することは難しいものです。そういった人材にも、どんどんセミナーを受けに来てもらえるよう、現場に即したテーマを検討していこうと考えています。

 

 

デジタルマーケティングがわかる人材を社内に増やす、社内コンサルティング化構想

 

このように、e 戦略推進室では、社内にデジタルマーケティングについてわかる人材を増やしていきたいと考えています。社内セミナーなどを通して基本的な考え方やノウハウを学んでもらうことにより、各部署にデジタルマーケティングの考え方が浸透していきます。結果的に、横串での施策が回りやすくなっていくはずですから。

 

そうやって、うちで導いた改善や新たな施策を、各々の事業部へそれぞれ適切に卸していって効果を上げることを目指しています。いわば e 戦略推進室はデジタルマーケティングにおいて、社内コンサルティング企業のようになるべきだと構想しているのです。戦略に基づいてデジタルマーケティングを推進し、浸透させるいう面からも全社に寄与していくことを目指しています。

 

 

ビッグデータで可視化した先を拓くのは、やっぱり人的なスキルでしかない事実

 

現在、当社ではプライベート DMP を導入してデータを蓄積しています。いわゆるビッグデータですが、この中にはユーザーインサイトが隠れています。とはいえ、弊社も写真事業を 80 年やっていますので、そのデータの中から読み取れるインサイトは、ある程度想定の範囲内なのです。でも、詳細に分析していくと、ある一点で我々の予想と違う動きが見えるところがあったりする。そういった点を粘り強く探して、根気よく掘り起こしていく、そういった宝探しのようなところがあるので、ビッグデータの分析は面白いと思いますね。

 

表層的な部分ではなくデータ分析を突き詰めていくオタク的な発想を持った人、そのオタク的発想をマーケットに置き換えられるマーケッター、この二人がいて初めて、データサイエンティストと言えるのではないかと思います。こういった分析は、決してロボットや AI では代替できない、ナレッジを蓄積したマーケッターならではの技能だと思いますので、こういう布陣を社内でも構築していけたら良いでしょうね。

 

厳しい時代です。今、広告やデジタルマーケティングに関わる人間は、自分の存在意義や価値をしっかり考えないとならないと思います。そして、自分ならではの強みや独自性を考えていかないとすぐにでも代替され得る危機感を持つべき。代理店さんも同様の理由でビジネス自体が普遍的ではないとうこと。であれば、どれくらい深く濃く、クライアントに寄り添うか、どう自社の価値を提供していけるかが重要です。

 

 

取材を終えて 編集長:箱石克好

 

3 回に渡ってお届けした、日本を代表する企業である富士フイルム・一色さんのインタビュー記事はいかがでしたでしょうか。
常に時代の変化に即して新規事業を導入し、成長戦略を進めてきた同社においても、その事業を成長軌道に乗せるために不可欠だったのが全事業を貫くデジタルマーケティングでした。企業規模が大きければ大きいほど、新たな試みを社内に取り入れ、推し進めることは困難がつきもの。一色さんが今、 「一つの結果」 としてこれらのお話をオープンにしてくださるまでの間に、どれほどの苦難があったかは想像に難くありません。しかし同時に、 『ものづくりニッポン』 の次なる時代が来たことをも予感させる同社の力強い挑戦に、日本ならではの強みが花開くグローバルを感じてなりません。

 

これからもシリーズ 事業会社による挑戦 にご期待ください。

 

 

【事業会社による挑戦】 富士フイルム(株) 一色 昭典①

【事業会社による挑戦】 富士フイルム(株) 一色 昭典②

【事業会社による挑戦】 富士フイルム(株) 一色 昭典③

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