プロフェッショナルの現場から 資生堂ジャパン① 徳丸健太郎氏

徳丸 健太郎

資生堂ジャパン(株)

EC事業推進部長

2018.12.10


2018年3月に(株)資生堂(以下、資生堂)が発表した2020年度までの中期経営計画では、今後3年におけるデジタル関連投資額を520億円と発表し、マーケティングやインフラへの積極的な投資姿勢を示して話題となりました。そのなかでもEC事業の売上構成比も2017年8%から2020年までに15%へまで高めることを明らかにしています。大きくデジタルシフトへ舵を切る同社のなかで、EC事業部を擁する資生堂ジャパン(株) EC事業部長 徳丸 健太郎氏にウィンスリー代表の黒瀬 雄一郎がお話をうかがってまいりました。

 

  資生堂ジャパン(株) EC事業推進部長 徳丸 健太郎氏

 

 

業界最大手の使命と姿勢。現場感覚で培ってきた経験値をEC事業部の推進へと統合

 

黒瀬:今日はよろしくお願い致します。いろいろお聞きしたいことがありますが、まずは、92年ご入社のプロパー社員でいらっしゃる徳丸さんにこそ、ぜひ御社、資生堂さんならではの強みや魅力からお聞かせいただきたいです。

 

徳丸:やはり、“化粧品”や“美”に対して業界をリードしていけること、いわゆるソリューションの幅も広く、セルフ型からプレステージまで幅広いチャネルを網羅しています。ブランドのポートフォリオも多様なものがありますし、プロダクトだけでなくテクノロジーをどう活用して美容のソフトも開発するかなど、150年ほどの歴史を持つ会社でありつつも、常に先進的なことにチャレンジするという部分は大きな魅力と言えるでしょう。これは当社ならではの伝統に基づく奥深さであり、それを活かせばダイナミックな仕事ができる会社なのではないでしょうか。僕もこれまでにさまざまなチャレンジをさせてもらったので、それこそがこの会社でずっと働くことができている理由のひとつだと考えています。

 

黒瀬:多彩なチャレンジを経て、今日に至るキャリアを教えてください。

 

徳丸:入社してから主に3つの業務に携わってきました。かつて資生堂では、現場を知らねばということで入社して最初は営業職からスタートする風土がありまして。当社の企業理念に「美しい生活文化の創造」というミッションがあります。ただ単純に「商品を売る」だけではなく、「美しくなる」という実感をお持ちいただけることで息の長いご愛用へとつながっていきます。そういったことの理解に通じる売り場のつくり方や、お客様への製品ご紹介における話法といったことなどは、8年間の営業経験を通じて学ぶことができました。

 

その後、ブランドのマーケティングを8年担当しますが、その大半はコンビニエンスストア向けブランドの担当でした。コンビニの棚というのはし烈な競争が繰り広げられていまして、その日その日の売り上げを死守していかなくてはなりません。とはいえやはり、ブランディングも大事。それらをどう両立させるか、苦しいこともありましたが、今思うと楽しかった記憶のほうが多いですね。

 

そこから事業戦略部という国内市場の事業戦略を担う部署に異動し、EC事業推進につながり、現在9年ほどの間、このeコマースビジネスに立ち会っています。ECビジネスは、365日24時間営業という特性がありますが、こうした意識はコンビニ時代に培われたものだと思っています。

 

 

事業部の視界は社内を越えて日本、グローバルへ。生活者視点を追求したコンシューマーセントリック

 

黒瀬:さまざまなご経験が統合されての「今」なのですね。トップリーディング企業であるからこそ先鞭をつける姿勢を負っておいでなわけですから、変革と挑戦の歴史に社員も育てられていくのでしょう。そうしたなか、EC事業部の位置づけというのは御社の中でどういったものなのでしょうか。

 

徳丸:当社が目指すビジョンのなかに「生活者があらゆる生活場面で、好きなときに好きなようにブランドを通じた化粧体験を楽しめることを実現する」というものがあります。そのビジョンを体現するうえで、EC事業を推進する私たちが中心となってリードしていく必要がありますね。

 

生活者視点である「コンシューマーセントリック」という世界をどうつくることができるか。どのように一人ひとりのお客様に向き合い、どんなコミュニケーションをするのかというと、やはりデジタルテクノロジーに行き着きます。そのひとつの手段がデータです。僕らは今そのオウンドメディアであり、またオウンドのデータウェアハウスでもある「ワタシプラス」において、パーソナライゼーションされたコンシューマデータをひとつところへの蓄積を進めています。

 

現在プレステージ向けのeコマースと、日本独自のクロスブランド展開にて販売する「ワタシプラス」、あとAmazonさんに代表される日用品の利便性を中心としたeコマース、この3つのアプローチを軸に成長路線の構築をしているところです。これらは単に当社のeコマースビジネスの発展に留まらず、「どのように事業を日本全体で有益に活用することができるか?」、また「eコマースの成長をどうドライブさせるか?」ということへの回答をも担う役割があると言えるでしょう。

 

黒瀬:デジタル化の際には課題も多かったのではないかと思うのですが。

 

徳丸:「ワタシプラス」が立ち上がって8年ほどになりますが、当初はやはり難しいものがありました。リアルとデジタルのそれぞれの世界を融合して、「一人ひとりのお客様に最適な化粧体験を提供しよう」という大きなテーマで始めたのですが、特に店舗を利用する高齢のお客さまのデジタルリテラシーの面などは非常に苦労が多かったですねぇ…。たとえば会員登録がやりにくいという話だったり、このメールの内容は適切なのかという議論だったり、本当にいろいろありました。

 

  「コンシューマーセントリック」を追求して生活者に新たな化粧体験の提案をしたい

 

黒瀬:ご苦労が想像できるような気がします。デジタル化における他部署との連携ではいかがでしたか?

 

徳丸:大きな方向性としては皆理解していたと思いますが、個別の部分ではどうしても最適化されていない部分があり摩擦のような “課題” は出てきましたね。ただずっと改善を図り続けることで、最近は全体として解決を目指すポジティブな “課題” へと転じられているのでは。

 

黒瀬:それでは、今現場で感じるEC市場の流れについてご意見をお聞かせください。

 

徳丸:先程お話したように、メガトレンドとしてはeコマースの市場というのは今後も成長が続くと思っています。ただ化粧品の産業におけるeコマースというのは、まだそんなに大きな存在ではないのが実情。店頭ではセレンディピティともいうべき世界があり、そこで提案されたものでその方のセレクトの幅が広がったりするのですが、そうした部分はまだまだ現状のeコマースでは実現できていません。それぞれのブランド、プロダクトに適したアプローチを追求しながらも、生活者をもっとわくわくさせるような化粧体験というのを実行していかなくては、と考えています。

 

 

チャンスを求める人には刺激的な環境!専門性を武器に会社の転換期を活かして自己実現を叶える

 

黒瀬:なるほど。転職者がEC事業推進室に配属された際に、こうした多様な資生堂のブランドポートフォリオをすぐ咀嚼して事業を推進していくことは可能なものでしょうか。

 

徳丸:それは本人次第でしょうね。やることは山のようにあり、市場のチャンスもあれば社内のチャンスもある。それをどのように自分で捕まえるか。与えられるのを待っているだけだと難しいとは思います。自分で動いてそれを実現しようとする人、というのを部署では望んでいますね。

 

黒瀬:チャンスを求める人にとっては非常にエキサイティングな環境と言えます。

 

徳丸:今回進めているキャリア採用では、デジタルやeコマース、アナリティクス、それぞれの領域において専門性を備えている方が前提と考えています。僕がさらに重要視している点は、ビジネスへの興味を持っている方。僕らは今の世の中に対してどのような価値をつくり、それを発展させていくか?に向き合っている部門であり、かつ会社ですので、現状を捉えながら考えられる創造性を持った方に出逢えることを期待しています。

 

もうひとつ言うならば、実行にはいろんな人の協力が必要になりますので、周りとコミュニケーションをとって物事を進められる方というのも歓迎ですね。

 

黒瀬:部署の雰囲気は、気軽に相談や連携をとりやすい風土なのでしょうか。

 

徳丸:もちろん!ただ、人によって受け止め方が違ってくるかもしれませんね。僕らの部門には専門家が揃っているから、それぞれと会話をすることで実にたくさんのことができるという人もいます。一方では、自分に関係がないことは興味がないという人もいるかもしれません。僕としてはよりオープンな環境を目指していきますが、最終的にはどういうマインドで仕事に向き合うか、個人のスタンスによるところが大きいと思います。

 

黒瀬:なるほど。では、今後の部署の目標をお聞かせください。

 

徳丸:「コンシューマーセントリック」さらに「パーソナライズ」をどう実現できるか?ということが最大のテーマであると考えています。化粧という世界には、まだまだ良い意味でのアナログ感があるわけです。テクノロジーを融合させることで、本当の意味でパーソナライズされた、個人にとっての有益で素敵な化粧体験というものをどのような形でつくれるのか。その先にビジネスの成長があると思います。

 

黒瀬:御社だからこそ目指せる境地ですね。売り場での偶発性に基づく体験もECで完結できたら本当にすばらしく唯一無二のことでしょうね。

 

最後に“今の時代に資生堂で働くこと”について、読者へメッセージをお願い致します。

 

徳丸:さまざまなことが変わりつつある転換期という醍醐味に、共にジョインしませんか?それを発展させることができるかというのはあなた次第。世の中に対して自分の声を持ちたいならば、当社であれば自己実現できるチャンスがあります。大きなことにぜひチャレンジしたい!と思っている野心的な方をお待ちしていますよ!

 

黒瀬:とても興味深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

 

(②へつづく)

 

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