松岡 功の「デジタルマーケティングってどうよ?」 第5回:「デジタルエクスペリエンス」を追求せよ

「デジタルトランスフォーメーション」という言葉をお聞きになったことはあるだろうか。企業のデジタル化を促す言葉として、このところ頻繁に使われるようになってきた。デジタルマーケティングもこの取り組みの1つである。そこで、今回はこの言葉をキーワードに、最近の取材の中から印象深かった話を2つ紹介したい。

図
広がる市場規模(日本マイクロソフトの自社イベント「Japan Partner Conference 2017 Tokyoにて撮影)

1つは、日本マイクロソフトの平野拓也社長が自社イベントの講演で話していた日本のデジタルトランスフォーメーション市場の見方である。図に示すように、同社はまず1995年当時の「パソコン+Windows」市場が1400億円規模としたうえで、2005年当時の「クライアント+サーバー」市場は1兆4400億円(パソコン+Windowsの10倍)、「モバイル+クラウド」市場は14兆4000億円(同100倍)、そしてデジタルトランスフォーメーション市場は26兆円(同190倍)になると予測している。
なお、図の中には明記されていないが、モバイル+クラウドは2015年の実績、デジタルトランスフォーメーションは2020年の予測である。平野氏は26兆円について次のように語っていた。

「この数字が見込めるのは、従来のIT予算だけでなく、例えばAI(人工知能)技術が広範囲に使われるようになって、さまざまな設備投資や事業部予算も対象にビジネスチャンスが広がる可能性があるからだ。従って、当社はこの市場に向けて全力で取り組んでいく」

大きなビジネスチャンスは何もITベンダーだけでなく、全業種にありそうだ。デジタルトランスフォーメーションの醍醐味はまさにそこにある。
もう1つは、米アドビシステムズのシャンタヌ・ナラヤンCEO(最高経営責任者)が来日会見で強調していた「デジタルエクスペリエンス」についてだ。ナラヤン氏によると、デジタルエクスペリエンスとは「デジタル技術を生かして顧客に感動を与えるような体験(エクスペリエンス)を提供すること」である。
アドビは現在、クリエイティブなデザインやコンテンツ制作に向けた「Adobe Creative Cloud」、ドキュメント業務を効率化する「Adobe Document Cloud」、企業のデジタルマーケティングを支援する「Adobe Experience Cloud」といった3つのクラウドサービスを提供しているが、デジタルエクスペリエンスはこれらに共通する同社の強力なアドバンテージである。
とりわけ、エクスペリエンスという言葉をそのまま使ったAdobe Experience Cloudは、デジタルマーケティングに加えてアナリティクスやさまざまな業務との連携を可能にした、アドビが提案するデジタルトランスフォーメーションと受け取れる。ナラヤン氏は会見で次のように語っていた。
「デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業には、ぜひともデジタルエクスペリエンスの重要性を認識して追求してもらいたい。そのために必要なスキルを持つ人材も育成すべきだ。それが企業にとってビジネスの大きな差別化要因になっていく」
デジタルエクスペリエンスは、すなわちデジタルマーケティングの目的ともいえそうだ。ということで、今回は「デジタルエクスペリエンスを追求せよ」をメッセージとしたい。

 

〈著者プロフィール〉
松岡 功(まつおか・いさお)
松岡功(デジキャリ) (002)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアにコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務めている。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。