Dear 「お金が全て」に違和感を感じる人 – プロボノのすすめ

ユーザーの好感度を上げる → ユーザーが自社ブランドから離れなくなる → ユーザー1人当たりの売上が増える」

打ち合わせで、誰かがこんな説明をしたとします。

 

その時、「確かに」と思う人がいます。

その時、「だよねー」と思う人もいます。

その時、「何だと? 俺たちは売上を増やすために、ユーザーの好感度を上げているのか?いや、分かる。分かるんだ。俺は営利企業に身を置いているし、そこから給料をもらって生活している。だから、俺はユーザーの笑顔を金に変えることで生き永らえていると言われても、それを完全に否定することはできない。笑顔売上変換装置と言われても、それを完全に否定することはできない。しかし! しかしである! 俺は、誰かが設計した巨大な金儲けマシーンの一部品などでは断じてない! いや、そうはありたくはないのだ! 俺が、俺たちが心の底から求めているのは、決してそんなものではない! 夢! 希望! 情熱! 勇気! そしてたどり着く、真実の愛! こいつらを綺麗事と呼ばせるような世界を、少しでも、俺は! 俺はああああああ!!ぐおおおおおおおおお!!!」と思う人もいます。

 

私は3番目の人間です。

しかも困ったことに、たまに説明をする側だったりもします。

capitalism

 

という悩みを本記事で扱うのですが、話を進めるにあたり、まず誤解のないように一点だけ説明させてください。

これは、「金なんかいらない」とか「金儲けは悪だ」とか、そういう話ではありません。

「お金が必要だとは思うけど、その優先順位が常にあまりにも高すぎて、本末転倒な気がする時がある」といった悩みが少しでも晴れたらいいな、という記事になります。

 

度合いの違いこそあれど、同じような悩みを抱えた人は割といるんじゃないかと思います。(同世代の人に「実はさ・・・」と話してみたら、意外と「ちょっと分かるかも」となったので)

営利企業における「お金が全てじゃない」という主張は絶望的に無力なので、まだ見ぬ同類たちはきっと窮屈な想いをしているでしょう。

これはどうにかせねばなりません。

という訳で、個人的にこのもやもやが少し晴れた経験から学んだことを共有してみようと思います。

 

 

NPO の人はこの悩みがないんじゃないか

NPO(非営利団体)の人たちは、この悩みとは無縁であるに違いない。

「俺たちはお金儲けじゃないよ」と看板をぶら下げて活動しているようなものだし、なんか得体の知れない怖さはあるけど、たぶんいい人ばかりのはずだ(というか、そうであってほしい)。

 

そう思い、私は NPO の人に会ってみることにしました。

 

Google 検索で情報を探し、なんとなく洗練された雰囲気の漂う NPO のウェブサイトに流れ着きました。

(すぐに探しているような情報には出会えず、割と時間がかかった記憶があります。大企業に関する情報より、発信量が少ないからだと思います)

説明会はないようだったので、ウェブサイトにあった問い合わせ窓口から連絡してみました。

 

「貴団体に興味があるので、一度直接お話を伺いたいです」

 

数日後、返信が来て、とりあえず Skype で話してみることになりました。

話を聞いてみると、デジタルマーケティングの経験のある人を探しているとのこと。

そこで私は、世の中の仕事を都合のいい大きさで切り分け、自分の所属する分類を口にしてみました。

 

「私は、デジタルマーケターです」

 

そんなこんなで、NPO のお手伝いをすることになりました。

デジタルマーケターを探している NPO のウェブサイトに、その旨が記載されていない場合があることを学びました。

 

プロボノという、実にちょうどいい仕組み

本業を続けながらそのスキルを活かして NPO のお手伝いをするというこのスタイルには、名前がありました。

「プロボノ」と呼ばれるこの仕組みは、NPO の世界では広く受け入れられているようです。

probono

 

 

これが、「とりあえず NPO で働くということを体験してみたい」という人にとって、実にちょうどいい入口になっています。(本来はそういう仕組みじゃないと思いますが、偶然の産物的に)

どの辺がちょうどいいかと言うと、

本業と並行する前提なので、週1, 2時間くらいでも受け入れられるところが多い。(たぶん)

無給なので、副業禁止ルールとか引っかからない。(会社とは各自ご相談ください)

といったように、「本業と並行で OK 感」がポイントになりそうです。

 

やってみて気づいた、プロボノの魅力もいくつか書いてみます。

誰にでもできる仕事じゃない(と自分は思っている)ことで、役に立ってる感が嬉しい。

それまで全く接点のない世界にいた人たちと、関わるきっかけができる。

NPO 組織の内側が見られる。

 

どこでも誰でも OK という訳ではないにしろ、NPO は基本的にどこも人手不足なので、受け入れてくれるところは多いと思います。

興味のある NPO にメールなり電話なりで「プロボノやりたいです」と伝えれば、何かしら話が進むと思います。

 

会社の仕事より守備範囲が広い

私は会社では「データに強めの人」として仕事をしています。

プロボノでは「デジタルとかマーケティングに強めの人」という感じです。

 

プロボノの方が、ざっくりしています。

データ分析もしますが、サービスの料金設計みたいな仕事も携わりました。

会社の仕事では私はやらない類の(領域の違う)仕事です。

flexible_organization

 

 

NPO は一般的に、大企業より組織が細分化されていないと思います。

「狭く深い技能を持った専門家をたくさん集めた方が、質の高い仕事ができる」と考えたら、人は組織を細分化しようとします。

その考えがいいか悪いかは別として、大企業と比較した時に NPO は資金に余裕がないケースが多いので、単純にそれができないことがあります。

 

というわけで、ざっくりした組織になるので、「まあやったことないけど、料金設計もこっちでやっちゃう?」的な雰囲気になります。

 

個人的には仕事の幅が広がって楽しいと感じましたが、もしかしたらこれをストレスに感じる人もいるかもしれません。

例えば、「私は UI / UX デザインの専門家です」という人も全然関係ない仕事をすることが多いという傾向は、知っておいて損はなさそうです。

 

NPO もお金は必要

NPO の仕事の中でもお金の話には直面します。

「そこに予算を投下して、投資対効果は本当にあるのか」みたいな話は、むしろお金に恵まれた企業よりもシビアかもしれません。

 

NPO にも、従業員の給料や事務所の家賃など固定の支出があるので、継続的な収入がないと潰れます。

 

すごくざっくり分類すると、NPO の主な収益源は3種類あります。

寄付

補助金・助成金

事業収益

 

最初に知った時は、「NPO も事業収益ってあるんだ」と思いました。

調べてみたら、割と事業収益がメインの収益源になっている団体もありました。

「NPO は何をやるにも全部無償」みたいなイメージを勝手に持っていましたが、そんなことはないんですね。

 

 

 

「お金が全て感」に違和感を抱いて始めた NPO の仕事でも、お金の話に直面しました。

貨幣経済だもの。

ですが、少なくとも私が関わったいくつかの NPO では、その違和感を感じませんでした。

 

「解決したい問題や実現したい未来があって、そのために考慮すべき1つの要素としてお金があるだけ」

誰かが直接口にした訳ではありませんが、言動の端々やその一貫性に、個人的にはそういった自然な考えがあるように感じました。

 

もちろん営利企業でもそう考えて仕事をしている方はたくさんいるでしょうし、最初に言及したように「金儲けは悪だ」とも思いません。

それでも、自分の目の前で起こっていることに疑問を感じて、「本当にこれでいいのかな」と考えてしまう人はいるんだと思います。

もしそう考えてしまうのであれば、NPO の世界を覗いてみても良いかもしれません。

 

私はまだ NPO についてほんの少ししか知らないので、営利企業から NPO に移った、人生のベテラン感が漂うおじさんの言葉を引用します。

 

「きみも早くこっちの世界に来なさい。こっちは楽しいぞ。ぐはははは」

 

おじさんは豪快にビールを飲み、それはそれは楽しそうに話していました。

 

 

〈著者プロフィール〉profile戸田
戸田 大介(とだ・だいすけ)
電通アイソバー株式会社(http://www.dentsuisobar.com/)コンサルタント。データ設計・分析の仕事を中心としながら、アプリの企画や設計なども担当。個人でもアプリ開発を行っており、宣伝費ゼロで App Store カテゴリ1位を記録している。 TOEIC900点の英語力を強みの一つとして入社するものの、同期入社社員中ダントツで最低の英語力であることに気づき、「自分にはアプリがある」と入社以来ますますアプリへの情熱を強めている。